概要

本課題「大規模データ解析と人工知能技術によるがんの起源と多様性の解明」 (課題番号:JPMXP1020200102、課題番号(2020年度): hp200138、課題番号(2021年度): hp210167、課題番号(2022年度): hp220163)は、 スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム の4領域(1.人類の普遍的課題への挑戦と未来開拓、2.国民の生命・財産を守る取組の強化、3.産業競争力の強化、4.研究基盤)の1つ、 「領域1 人類の普遍的課題への挑戦と未来開拓」の7課題のうちの1つとして、 がんの起源と多様性の解明に向けて取り組んでいます。

課題代表者メッセージ

宮野 悟

がんは今や死因の第一位であり人類にとって最大の脅威です。シーケンス技術の革新を背景とした過去10年間におけるがんのゲノム解析によって、主要ながん種のほとんどについて、その病態に関わるドライバー変異の全体像が明らかにされました。それらの成果により、変異の原因や腫瘍内の多様性、病期の進展・再発が遺伝子変異の観点から理解できるようになりました。また、最近、一見正常に見える組織においてすでに、がんで特徴的に認められる遺伝子の変異を有するクローンの拡大が頻繁に生じていることが報告され、がんの前駆病変として注目を集めています。

一方、ドライバー変異の獲得に始まる発がん初期のクローン選択の過程や、その後、多数の変異の獲得とクローン選択によってがん細胞集団に高度な多様性が生じ、浸潤・転移・再発が惹起される過程の分子メカニズムについては、なお多くが不明であり、がんゲノミクス研究の世界の中心となっています。

本プロジェクトは、これらを理解するために、正常組織においてどのように遺伝子変異クローンが生じるのか、遺伝子変異ないしその組み合わせがどのように細胞の表現型を決定するのか、さらには、その多様性・複雑性のために研究が進んでいないゲノムの構造異常が発がんにどう関わるのか、について解明することを目的としています。いずれも革新的なサンプリング技術とともに、莫大な計算リソース等(整数を含む演算能力、高速ストレージ、効率的運用方法)に支えられた高度な数理的解析手法を駆使することが不可欠であることはいうまでもありません。

また、データサイエンスの観点からは得られた膨大な解析結果から、高速かつ効率的に解釈をする(説明可能な結論を得る)ことが重要です。我々は、これまでのがんのゲノム変異の解析という戦略に、新たながんの攻略点を新AIと大規模ネットワーク推定技術というデータ解析技術で見出すことができると考えています。

メンバー

  • 代表機関
    • 国立大学法人東京医科歯科大学
      • 研究課題開発責任者: M&Dデータ科学センター 特任教授 宮野悟
  • 協力機関
    • 国立大学法人京都大学
      • 協力機関代表者: 大学院医学研究科 教授 小川誠司
    • 愛知県がんセンター
      • 協力機関代表者: 研究所システム解析分野 分野長 山口類
  • 連携機関
    • 富士通株式会社
      • 連携機関連絡担当者: 富士通研究所 フェロー 岡本青史
    • 国立大学法人東京大学
      • 連携機関連絡担当者: 医科学研究所 准教授 片山琴絵
    • Karolinska Institutet
      • 連携機関連絡担当者: Department of Medicine/Center for Hematology and Regenerative Medicine Visiting Professor 小川誠司
  • 事業参加者
    • 事業参加者(代表機関)
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 特任教授 宮野悟
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 准教授 長谷川嵩矩
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 助教 伊東聰
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 特任助教 角田将典
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 特任助教 小川弥穂
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター統合解析分野 特任研究員 田中洋子
      • 国立大学法人東京医科歯科大学M&Dデータ科学センターAI技術開発分野 教授 Heewon Park
    • 事業協力者(協力機関)
      • 国立大学法人京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 教授 小川誠司
      • 国立大学法人京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 特定教授 南谷泰仁
      • 国立大学法人京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 助教 越智陽太郎
      • 愛知県がんセンター研究所システム解析分野 分野長 山口類
    • 連携参加者(連携機関)
      • 富士通株式会社富士通研究所 フェロー 岡本青史
      • 富士通株式会社富士通研究所 プロジェクトマネージャー 丸橋弘治
      • 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 准教授 片山琴絵
      • 東京大学医科学研究所先端医療研究センター 教授 南谷泰仁